青魚の効用

水産物と健康

魚は、肉類と並んで、私たちが生きていく上で必要な9種類の必須アミノ酸をバランス良く含む良質なたんぱく源です。また、魚には健康を支える様々な成分が含まれています。
特に、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)といったn-3系多価不飽和脂肪酸に関しては、私たちの健康に与える効果について多くの知見が蓄積されており、 肝臓がんや男性の糖尿病の予防、肥満の抑制等に対して効果があることが最近の研究結果で示されています。
さらに、DHAやEPAは、アレルギー症状の改善、うつ病の緩和、認知症の予防に効果があるとの報告もあります。

加えて、平成24年に消費者庁が公表した食品の機能性に関する既存の科学論文に基づく評価では、 (1)心臓や血管疾患のリスクの低減、(2)血中の中性脂肪の低下、(3)関節リウマチの症状の緩和の3点について、DHAやEPAの機能性に関する明確で十分な根拠があるとし、その健康に対する効果が高く評価されました。

また、この評価の中では、DHAと私たちの脳の関係についても、DHAは脳を構成する脂肪酸の40%を占めており、新生児の脳の正常な神経細胞の発達のために一定量以上のDHAが必要であると推察されるとしています。

DHAやEPAのほかにも、イカやカキに多く含まれ肝機能の強化や視力の回復等に効果が期待されるタウリン、鯨肉に含まれ疲労の回復に効果があるバレニンなど、水産物は多くの機能性成分を含有しています。
また、小魚を丸ごと食べることで、不足しがちなカルシウムを摂取することができますし、海藻類はビタミンやミネラルに加え食物繊維にも富んでいます。水産物は私たちの健康を支える様々な機能を備えているのです。

このように、水産物は、おいしさだけでなく優れた栄養特性を持つ食品です。 一人一人が様々な魚介類をバランスよく食べることにより、健康を維持・増進していくことが期待されます。

DHA、EPAを多く含む食品
水産物に含まれる主な機能性成分

学校給食等での食育の重要性

近年では、40代以下の世代で魚介類の摂取量が特に少なくなっています。
40代以下の世代は子育て世代とも重なっており、多くの子ども達が、日常的に魚介類を口にする食習慣を持たずに成長していくことが憂慮されます。 食に対する簡便化・外部化志向が若い世代を中心に強まっており、家庭において食育の機会を十分に確保することが難しくなる中、子ども達にとって身近な学校給食等を通じ、 我が国の食文化である和食、魚食に親しむ機会を提供し、食に関する知識と食を選択する力を育んでいくことが重要です。

国では、関係府省が一丸となって、米飯給食や地場産物を用いた学校給食を推進しています。
また、近年では、漁業者や加工・流通業者等が中心となり、食材を学校給食に提供するだけでなく、魚介類を用いた給食用の献立の開発や、漁業者自らが出前授業を行って魚食普及を図る活動が活発になってきています。

一方、学校給食には、特に地元産の魚介類を供給しようとする場合に克服すべき課題がいくつかあります。
例えば、栄養計算の上で事前に献立が決まっており、一定規格を満たした食材を一定量供給することが求められること、予算額に制約があること、学校によっては調理設備が魚介類の調理に不十分であること等は、 水揚げが不安定で調理に比較的手間のかかる生鮮の丸魚を給食に使用する際に解決すべき課題となります。
学校や調理師など需要者側との緊密な連携により、提供する魚介類の規格等についてあらかじめ一定の柔軟性を確保しておくことや、学校の事情に合わせて供給側で一定程度の加工調理を済ませた上で納入すること等により、このような課題を克服していくことが重要です。

学校給食は、子ども達が命を支える食について学ぶ絶好の機会です。 こうした機会を十分に活用し、我が国の魚食文化の伝統を次世代に伝えていくことが期待されます。